これからの医師の働き方とキャリア|三谷雄己先生登壇|イベントレポート|岩倉駅前たはらクリニック

 
 
京都市左京区の岩倉駅前たはらクリニックでは「あかちゃんからご高齢の方までみる診療所」として、外来・在宅のプライマリ・ケアを提供しています。2025年2月20日に『岩倉駅前たはらクリニック 医師採用サイト』公開を記念して、『踊る救急医』という名義でSNSなどでも医学教育の発信活躍中の三谷雄己先生と、田原正夫院長とのトークセッションを開催しました。本記事では、当日の内容から、医師の働き方とキャリア、地域医療とデザイン、医師採用サイト制作の裏側などをご紹介します。
 

京都市・左京区岩倉で家庭医療を実践するクリニック

「岩倉駅前たはらクリニック」は、京都市左京区の岩倉エリアに位置するクリニックです。最寄り駅である叡山電鉄「岩倉駅」からは徒歩すぐ。
当院では、内科・小児科などを含むプライマリ・ケアを中心に据えながら、外来診療と在宅医療をおこなっています。田原正夫院長は、病院で呼吸器内科医として勤務した後、「より総合的な医療を地域で提供したい」という思いから、家庭医に転向し、岩倉駅前たはらクリニックを開業しました。
開業から8年が経過し、グループ診療体制(複数医師での診療体制)を本格的に進めていくために、医師採用サイトを公開しました。
 

メイキング・オブ・医師採用サイト

岩本先生(以下、岩本):今回、医師採用サイトを作ろうと思ったキッカケは何だったのでしょうか?
 
田原院長(以下、田原):当院はプライマリ・ケアを実践する診療環境があります。このタイミングで複数人の常勤体制にして、在宅と外来を両方展開していくことで、地域医療のニーズにもっと応えていきたいと考えています。また、医学生の実習や専攻医研修も受け入れているので、教育面も拡充したいという思いがあります。
そこで、医師採用を本格的におこなっていくことにしました。ただ、なかなか従来型の求人媒体だけでは、そういった柔軟な働き方をきちんと伝えられない。そこで医師採用サイトを作って、このクリニックでどんな働き方が可能か、どんな地域なのかをしっかり発信しようと思ったんです。
 
 
岩本:医師採用サイト制作のキックオフとして、三谷先生と私、田原先生の3名でオンラインミーティングを実施しましたね。どんなことを話し合ったか、覚えていますか?
 
三谷先生(以下、三谷):そのときのミーティングで印象的だったのは、田原先生の地域医療に対する思いでした。また、岩倉の地域がとても魅力的なことも感じました。岩本先生が実際に診療された時の写真なども見て、新しく京都に移住する人にとっても魅力的な地域だということが伝わってきました。
 
 
岩本:ミーティングの中で三谷先生が提案してくれたキャッチコピーが「そうだ、京都で家庭医してみよう。」でしたね。これをもとにコンセプトが決まって、企画が進んだのを覚えています。
 
田原:最初のミーティングから今思い出しても、私たちの思いをしっかり汲み取ってもらいました。とても良い方向づけをしてもらえたと思います。
 

医師の柔軟な働き方を提案

三谷:田原先生のメッセージは、田原先生の文章を私が校正させていただきました。僭越ながら、田原先生の思いがより伝わるように手を加えさせてもらいました。
 
田原:私の思いをしっかり汲んでいただいて、本当にありがたかったです。若手ならではの視点で、硬すぎる表現を読みやすくしてくれました。
 
岩本:医師採用サイトには「柔軟な働き方ができる」というページがあり、「週4日のフルタイム勤務」「平日5時までの勤務」「週休3.5日フレキシブル勤務」など、3つの働き方の例が具体的な年収と共に示されています。医療機関でここまで具体的に働き方や年収を示しているのは、日本でもかなり珍しいのではないでしょうか。
 
三谷:本当にすごいですね。転職サイトなどを見ても大まかな情報しか掲載されていないことが多いです。ここまでオープンに示されていると、安心して相談できると思います。
 
岩倉駅前たはらクリニックの働き方の例(当日スライド資料)
 
田原:これはあくまで例で、応募される先生の希望に合わせて、他のパターンも考えています。お問い合わせいただければ、フレキシブルに相談に乗れる体制を整えています。育児中でフルタイムで働けない方も、無理のない働き方をしていただけるようにご希望に沿いたいと考えています。
 
三谷:ここまで柔軟な働き方を許容している医療機関はなかなかないですね。先駆的な事例になりそうです。
 

京都・岩倉の魅力を伝える工夫

岩本:「京都・岩倉地域」のページには、地域の魅力が凝縮されています。特に目を引くのは、三谷先生の「からだ企画」チームで作成した周辺マップですね。
 
岩倉駅前たはらクリニックの周辺マップ(→掲載ページはこちら
岩倉川と緑の自然の中に、地下鉄と鞍馬線が通っている京都・岩倉。
周辺マップで地域の魅力を表現しています。
Design: からだ企画 & 株式会社DTG
 
田原:このページは本当に充実していますね。一つのページにこれだけの情報が詰まっています。このマップやイラストも本当に綺麗に作っていただきました。完全オリジナルのものを作っていただいて、嬉しいです。
 
三谷:このページのコンテンツは、田原先生や岩本先生に実際にクリニックで働いて感じた地域の魅力を聞いて、作りました。美味しいお店や周辺環境など、新しい地域で働き始める人が気になる情報をたくさん盛り込んでいます。実際、クリニックの採用ページには地域の情報があまり載っていないことが多いんです。年収などの数字ももちろん大事ですが、どんな場所なのかという情報は見学に行かないとわからないことが多い。そういう情報が伝わるコンテンツにしたいなと思いました。
 
岩本:このマップはかなり忠実に再現されていて、これを元に見学や診療、入職した時に回ってみても面白いかもしれません。
 
田原:この地域には名門の同志社をはじめ、たくさんの教育機関があります。保育園や幼稚園も充実していて、待機児童問題もあまりないんですよ。
 
岩倉の保育園・幼稚園・学校(当日スライド資料)
 

三谷先生の多彩なキャリア

救急医から整形外科医へ、そしてクリエイターへ

三谷:私は初期研修2年を終えた後、救急科を専攻しました。医師3〜5年目は救急科専攻医として勤務していました。ただ、医師6年目になった時点で将来について悩みました。救急科や総合診療科などジェネラリストと言われる診療科の若手は似たような悩みを抱えるかもしれません。自分が「何でも屋」になってしまっている感覚や、最終的な治療決定を他科の先生に委ねる形になっていることに疑問を感じたんです。
そこで私は、元々興味のあった整形外科の道も選ぶことにしました。救急科と専門性の高い整形外科を掛け合わせれば、もう一つの武器としての専門性を持てると考えました。そこでダブルボードカリキュラムに乗り、両方の専門医を習得する道を選びました。
 
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ダブルボード
ダブルボードとは「2つの専門医を取得すること」を指し、ダブルボード専用の専門研修カリキュラムが一部の施設で整備されています。
例えば、下記のようなダブルボードが日本専門医機構のウェブサイト(2025年4月現在)で説明されています。
  • 救急科専門医と整形外科専門医
  • 内科専門医と総合診療専門医
  • 小児科専門医とリハビリテーション専門医
  • 救急専門医と外科専門医
 
岩本:三谷先生の活動は臨床だけにとどまらないですよね。
 
三谷:私は医学生時代からブログやSNSで発信している先生方から多くを学びました。救急医になったタイミングで、私も自分が悩んだこと、勉強したことをまとめ始めたんです。その活動がきっかけで書籍執筆の機会を得たり、学会委員会に招かれたりするようになりました。最近では医療分野のデザインにも力を入れています。
 

デザインと医療の交差点

三谷:医療をデザインするという意味では、地域医療と通じる部分があると思っています。地域医療は医療だけでなく、教育や救急隊とのコミュニケーション、他の施設や病院との連携など、様々な文脈が必要とされます。まさにジェネラリストの視点が重要です。医療という文脈を理解したデザイナーは少ないので、医療とデザインの間に立つ人材になりたいと考えています。
実際、私はイラストレーターの角野さんと共に「からだ企画」という会社を立ち上げます。
 
三谷先生の当日スライド
三谷先生の当日スライド
 
三谷:デザインというと見た目の美しさだけに注目されがちですが、実際には人々の想いや課題を解決する手段だと思っています。みんなでコンテンツを作り、届けることが大切なんです。
 
 

これからの医師のキャリアと働き方

専門医からジェネラリストへ、ジェネラリストから専門医へ

岩本:田原先生も呼吸器内科からプライマリ・ケアへのキャリアチェンジをされていますね。
 
田原:呼吸器内科を病院でやっていたのですが、診療所で医療をしようと思った時に悩みました。専門医として歩むキャリアは、どんどん尖っていく形になります。呼吸器内科の中でも、さらにある特定の分野を、さらにその中のもっと狭い領域を…と専門性が高まっていきます。
でも、そこから診療所に戻るとなると、「自分の専門以外はわからない」と言えてしまう状況が生まれる。尖り切るか、どこかで尖るのをやめるか。急に「明日から何でも診ます」というのは違うだろうと思いました。ジェネラルに診るための修行が必要だと考え、キャリアチェンジしたのです。
 
三谷:僕の場合とは逆ですね。スペシャリストからジェネラリストへの道を選ばれた先生の話はあまり聞く機会がなかったので、とても参考になります。
 
田原:どちらのキャリアも社会的に大切です。もちろん専門分化して高度な医療を提供することは必要ですが、私の世代までは専門分科がメインストリームで、ジェネラルなキャリアを歩む道筋があまり示されていなかった。今はどちらのキャリアも選べる時代になってきているのではないでしょうか。
 

コラボレーションの価値

岩本:田原先生、今回の医師採用サイト制作を通じて三谷先生と関わってみて、改めていかがでしたか?
 
田原:三谷先生のやろうとしていることが、今回の医師採用サイト制作の意図と合致していたことを改めて実感しました。本当に良いコンテンツを岩倉駅前たはらクリニックにもたらしていただき、ありがとうございます。私の求めているニーズと三谷先生たちの求めているニーズが一致して、良いコラボレーションができたことを嬉しく思います。
 
三谷:僕もこのような機会をいただけて、今日こんなふうにお話できて嬉しかったです。ありがとうございました。
 
田原:ありがとうございました。
 
岩倉駅前たはらクリニックでは医師募集中です。興味がある方は見学からでも気軽にご連絡ください。柔軟な働き方ができて、京都駅から30分という好立地です。気軽にお問い合わせください。見学やオンライン面談も受け付けています。
 
クリニックのアクセスマップ(当日スライド資料)
 
※本記事は、イベント当日の内容をもとに編集・再構成して掲載しています。読みやすさを考慮し、発言内容を一部要約・修正していますが、内容としては維持しています。
 
 

この記事の登壇者

田原正夫院長
岩倉駅前たはらクリニック
 
三谷雄己先生
広島大学救急集中治療医学/県立広島病院 整形外科
 
岩本修一先生(司会)
株式会社DTG
 
 

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